[ ここから本文 ]

商品先物銘柄トピックス

再来する欧州危機

4月16日スペイン10年国債利回りは6.0704%と昨年11月30日以来再び6%を超えた。17日の短期債入札は無事終了したが、4月19日には2年物、10年物の国債入札があり、利回りが更に上昇するか予断を許さない状況である。この背後には何があるのだろう?

問題の一つは、EUが官僚的に緊縮財政の目標ばかりを強調し、それにスペイン政府が反発しているという点であり、ギリシャにも共通したものである。

3月20日EU首脳会議において財政規律を強化するための新条約「財政協定」が締結されたが、同じ日、ギリシャは2012年度の財政赤字の対GDP比の目標を緩和するという逆の動きを発表した。EUは今年のスペインの財政赤字目標をGDP比4.4%とすることを求めていた。これに対しスペイン政府は5.8%という独自の目標を設定した。スペイン政府の反乱である。

その背景には、スペイン経済が単なる景気後退に留まらず、失業率の増加と物価上昇という二つの難題を抱え、スタグフレーションになりそうだからである。スペインにとって今大切なのは支出を切り詰めることではなく、収入を増やすことである。いかにして成長戦略を見出すか、人々の働く場を作って経済を立て直すかが課題であるにもかかわらず、ドイツを中心としたEU首脳は、スペインやギリシャの財政赤字は分不相応な支出にあるとして、まずは緊縮財政を強いている。それは、ますます返済能力を減殺させ、債務の泥沼から抜け出せなくなる構図である。FT紙などは、EUの政策立案者が財政政策を単純な会計上の問題とみなして、それによる動態的な影響を考慮していないと批判している。

二つ目の問題は、ECBが昨年12月と今年2月末に行った計1兆ユーロ弱の3年物貸し出しであるが、これを使って欧州金融機関、ことにスペインの銀行は、スペイン国債を購入し、利ザヤを稼ぐことに成功した。そのおかげでスペイン国債の売れ行きはよく、金利は下落し、ドラギマジックともてはやされて欧州危機は去ったかのように見えた。

しかし、今や、その1兆ユーロの効力が早くも尽きかけている。スペインの金融機関は12月に4.5%程度で、2月には3.5%辺りの利回りで、スペイン国債を購入した。それが、現在は6%まで利回りが上昇しているということは、それだけ保有した国債の評価損失が出ているということである。

満期まで保有できれば、単なる途中経過の評価損失で終わる。しかし、追加でスペイン国債を購入して買い支えようにも、すでに資金は使いつくしている。その上、スペインを含む欧州系金融機関は今年の年末までに社債償還に伴う資金需要が推定6000億ユーロある。その資金を生み出すためには、国債を損切りして売却しなければならない。それはスペイン国債の利回りを上げることになる。つまり、スペインの新たな資金調達利回りは上昇するという構図になっている。市場はこれが続くと読んでいる。

もう一つ国債に関して市場が懸念していることは、ギリシャ国債で、実質75%の債権カットが民間金融機関に対して行われ、それはCDS市場も巻き込んで大きな損失を金融機関に与えた。

今後スペインやポルトガルなど他の欧州各国の国債でも同じことが起きる可能性があると民間金融機関は身構えている。ECBはといえば、安値で金融機関から買い取ったギリシャ国債を最終的には同値でギリシャに買い取らせ、自らは損失を被らなかった。そうしたECBの態度に同じ手には乗らないと欧州金融機関は思い始めており、ECBも二度同じことをやることはできない状況となっている。

つまり、欧州債務危機はECBによる大規模な貸出と、やEUによる民間金融機関の負担を含めたギリシャ国債の借り換えにより一時しのぎはできた。だが、それが欧州各国の真の債務問題解決には至っていないというのが市場が感じ始めている新たな危機であり、スペインに始まり今後どこに飛び火するかわからない。

そうした意味で、今はだらだらしている金価格もいずれは上昇すると思う。それまでにしっかり金価格は下がっていて欲しいと思う。その分上昇に勢いがつくからだ。

株式会社コモディティー インテリジェンス 近藤雅世

2012年4月18日(水)

株式会社コモディティー インテリジェンス 近藤雅世(こんどう まさよ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。 商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。
2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンス設立代表取締役社長就任。

コラム提供:株式会社コモディティー インテリジェンス

コラム一覧へ戻る

当社は「ALL先物比較」に掲載される情報(以下「掲載情報」といいます。)の完全性 および正確性を保証いたしません。また掲載情報は、将来における結果を示唆するものではありません。 したがいまして、お客様において掲載情報に基づいて行動を起こされた場合でも、 当社はその行動結果について何らの責任も負担いたしません。 掲載情報に基づく行動は、お客様の責任と判断によりお願いいたします。
掲載情報は、金融商品の売買等の勧誘を意図したり、推奨するものではありません。 お客様において掲載情報に含まれる金融商品の売買等の申込等をご希望される場合には、 その掲載情報に記載の金融機関までお客様ご自身でお問い合わせください。 当社はお問い合わせに関し対応いたしかねます。
掲載情報のうち「商品先物銘柄トピックス」等に関しましては、著作権法等の法律により保護されており、 個人の方の私的使用目的以外での使用や権利者に無断での他人への譲渡、販売コピーは認められていません。