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先物マーケットコラム

原油は上昇基調も上値余地は限定的

 米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油期近は12日、一時、53.76ドルと3月7日以来の水準へ上昇。米軍が先週、シリアの軍事施設に向けミサイル攻撃を行い、中東情勢の緊張が高まる一方で、弾道ミサイル発射などの挑発行為を繰り返している北朝鮮近海に空母を派遣し、北朝鮮情勢の先行き不安も広がっており、地政学上のリスクが相場上昇の背景となっている。また、1週間前に生産を再開したリビア最大のシャララ油田が9日から閉鎖され、同国の原油生産が昨年9月以来の水準に落ち込んでいることや、石油輸出国機構(OPEC)当局者からの減産延長を支持する発言が続くなか、米紙ウォールストリート・ジャーナルが11日、サウジアラビアの情報筋の話として、同国も減産延長を望むと報じたことも一因。投機筋の買いスタンスが再び強気に転じていることや、テクニカル面の強さなどもあり、相場を取り巻く環境が大きく改善している。

 目先は1月3日の高値(55.24ドル)を視野に入れた動きとなるのかもしれないが、同水準を突破しても60ドル方向へ一段と上昇していくのは困難だろう。12日発表の7日までの週の米エネルギー情報局(EIA)統計で原油生産は8週連続して増加し、昨年1月以来の高水準にある。米石油リグ稼動数は2015年4月以来の水準まで回復し、シェールオイルの生産拡大が続く見通しに変わりはない。米国以外に協調減産に参加していない産油国の増産も見込まれることや、サウジアラビアやロシアが現水準以上の減産を実行する可能性は低い。現時点では再び50ドルを割り込むような局面は考えにくいものの、よほどの材料が出てこない限りは上値の余地は知れているだろう。

【一段の価格上昇を見込む声強まる】
 市場からは、原油価格の一段の上昇を見込む声が強まっている。SEBのアナリストは、シリア情勢などが原油価格上昇のリスクプレミアムに加わり、特に現在、石油在庫は減少しており、市場はもはや大幅な供給過剰にはないと指摘し、第2四半期のブレント原油平均価格は57.50ドルで、何度か60ドルに達する可能性があるとの見通しを示した。RBCキャピタル・マーケッツの商品ストラテジーの責任者は、原油価格は数カ月内に現水準を約20%上回る60ドル台前半への上昇を見込み、製油所のメンテナンスシーズンが終了し、原油価格の重しとなっている米原油在庫の減少が始まると予想し、夏のドライブシーズンも価格を押し上げ、需要はすぐに減少しないだろうとのこと。

 シティグループによると、OPECは減産合意の意図せぬ結果の清算に直面しているとのこと。減産で価格押し上げも米原油在庫が拡大し、生産も増加するなか、OPECは信用問題を回避するため年末まで減産を延長する必要があるという。延長すればブレント原油は60ドルを超え、延長しなければ40ドルへ押し戻される可能性があるとの見方を示した。

【ロシアも減産の支持の可能性】
 ロシアは今月末までに日量30万バレルまで減産することを約束するなか、ドボルコビッチ副首相によると、4月と5月の結果を検討した後、減産延長に関する決定を下すとのこと。同副首相は7日、モスクワで行われたエネルギー省会議で、これまでのところ減産は期待されたほど価格を押し上げていないと述べた。一方、ノバク・エネルギー相は、減産は市場を安定化させ、ロシアは在庫水準を注視し続けるだろうが、協調減産を延長するかどうかを決定するには時期尚早だと語り、慎重姿勢を崩していない。

【サウジアラビアは3月に減産】
 事情を知る関係者の話によると、サウジアラビアの3月の原油生産は前月比日量11万1,000レル下回る990万バレルと1月以来の低水準で、引き続き減産割当水準(日量1,005万8,000バレル)を下回ったとのこと。2月は貯蔵タンクを再び満たすため、1,001万1,000バレルに増加した。市場からは、サウジアラビアが割当水準以上の減産を実行しており、市場や価格にとっては良いニュースとの声が聞かれる。サウジは減産の結果として米国向けの輸出を削減しており、3月31日までの週のEIA統計で米国のサウジ産原油輸入は前週比24%減少の日量88万8,000バレルと、昨年12月以来の小幅なものだった。

【EIAは来年の米原油生産を上方修正】
 EIAは11日に発表した4月の短期エネルギー見通しで、米原油生産に関して、今年は日量920万バレルと前月予想921万バレルからわずかに下方修正するも、来年は990万バレルと973万バレルから引き上げた。OPECの今年の原油生産は日量3,951万バレルと前年の3,899万バレルを上回り、来年は4,021万バレルに増加する見通し。非OPEC加盟国は、今年が5,880万バレルと前年比1.1%上回り、来年は5,996万バレルに拡大する予想。WTI原油価格見通しについては、今年が52.24ドルと前月予想53.49ドルから、来年は55.10ドルと56.18ドルからそれぞれ引き下げられた。

【OECD加盟国の商用石油在庫減少続く】
 OPECは12日に発表した月報で、今年の世界石油需要見通しを前年比日量127万バレル増の9,632万バレルと、前月から1万バレル引き上げた。第1四半期の中国の指標が予想を上回ったことを反映も、昨年(138万バレル増)からは伸びが鈍化するもよう。3月の世界石油供給は前月比日量23万バレル減の9,582万バレルも、前年比は22万バレル上回った。今年の非OPEC加盟国の供給見通しは前年比日量58万バレル増の5,789万バレルと、前月から18万バレル上方修正された。3月のOPECの原油生産は日量15万2,700バレル減の3,192万8,000バレル。アラブ首長国連邦(UAE)とベネズエラに加え、減産が免除されているリビア、ナイジェリアとイランもそれぞれ減少した。サウジアラビアは4万1,600バレルの増加(日量999万4,000バレル)。経済協力開発機構(OECD)加盟国の2月末の商用石油在庫は前月比2,830万バレル減少の29億8,700万バレル。前年同月を約3,400万バレル下回る一方、過去5年平均を2億6,800万バレル上回っている。

【3月のOPEC減産順守率は99%=IEA】
 国際エネルギー機関(IEA)は13日発表した4月の月報で、今年の世界石油需要見通しを前年比日量130万バレル増と前月予想から10万バレル引き下げた。第1四半期の需要が予想を下回ったためで、2年続けて前年を下回るもよう。3月の世界石油供給は日量75万5,000バレル減少したが、非OPEC加盟国の今年の供給は48万5,000バレル増加する見通し。前年は79万バレルの減少だった。今年の米原油生産は日量68万バレル増加する見込み。また、OPECの3月の原油生産は日量36万5,000バレル減の3,168万バレル。3月の減産順守率はOPECが99%、非加盟国が68%と前月の38%から大きく上昇した。


【NYセントラルパーク南側から見上げる高層ビル】

【NY金は200日移動平均突破がポイント】
 ニューヨーク金先物期近は13日、一時、1,287.6ドルと昨年11月9日以来の水準へ上昇。終値ベースで厚い壁となっていた200日移動平均も上回った背景には、リスクの高まりがある。米軍は7日にシリア軍施設をミサイル攻撃し、週末には弾道ミサイル発射など挑発行為を繰り返す北朝鮮へのプレゼンスを高めるために北朝鮮近海に空母を派遣し、トランプ大統領の次の一手が読めない怖さが広がっている。トランプ米大統領が12日、ドルは強すぎると述べ、ドル指数が一時、2週間ぶりの水準へ急低下したことも一因となった。

 また、23日に仏大統領選挙第1回目投票を控え、極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首が勝利する可能性があることや、トランプ政権の税制改革の実現性への不透明さなども引き続き下支え要因となっている。米上院は7日に連邦最高裁判事に保守派のニール・ゴーサッチ氏を賛成多数で承認したが、与党・共和党の強引な手法で採決したことから野党・民主党との対立が深刻化しており、28日までに連邦政府の暫定予算案がまとまらなければ、29日から一部の連邦政府機関が閉鎖されかねない状況にある。税制改革の議論はその後となり、法案成立までには予想以上に時間がかかるかもしれず、株価動向次第では金価格の一段の上げが見込まれそうだ。

 ゴールドマン・サックス・グループは12日付リポートで、今後数週間、トランプ米大統領絡みの株式相場の一段の調整や地政学上のリスクが高まるかもしれないが、今後3−6カ月後に1,200ドルへ押し戻されるとの見方を示した。現時点では、相場環境が急速に悪化するような状況にはなく、目先も上昇基調が続く公算は大きい。チャート上では、昨年7月高値から12月安値までの下げ幅に対する61.8%戻し相当(1,279.0ドル)を上抜いたことから、次の上値目標は3分の2戻し相当(1,291.2ドル)、1300ドルの節目、昨年11月9日高値(1,318.6ドル)となろう。



2017年4月17日

(みんかぶ/NYのもののふ)

株式会社みんかぶ NYのもののふ(ペンネーム)

担当
商品先物・金融市場

経歴
1994年から商品先物業界で市況作成・アナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、1999年からは投資情報会社のニューヨーク駐在員としてニューヨーク在住。主に市況作成に従事。現在は、原油中心で為替、貴金属、穀物に関する情報も配信。
読み手に容易に理解していただけるような情報配信を目指している。

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