[ ここから本文 ]

先物マーケットコラム

金はドル安再開や米財政赤字拡大懸念が支援

【金は投資資金の動向も確認】
 2月12日週のニューヨーク金市場は、4月限が1月25日以来の高値1,364.4ドルを付けた。米株価の暴落が一服し、リスク選好の動きが戻り、ユーロ高に振れた。また米予算教書で財政赤字見通しが示されたことなどを受けて赤字拡大に対する懸念が強まったことからドル安が再開した。米予算教書ではインフラ投資の拡大が示されたが、大型減税で歳入が伸び悩むことから、9,840億ドルの財政赤字が見込まれた。ただ予算教書の試算は楽観的との見方もあり、財政赤字は1兆ドルを超えるとの予想もある。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、トランプ米政権の税制改革により短期的に米経済成長は押し上げられるとしたが、中期的には赤字や債務などの面でマイナスの影響が出る可能性があるとの見解を示した。米10年債利回りは2.944%まで上昇し、2014年1月以来の高水準となった。米経済が堅調との見方が強いなか、1月の米消費者物価指数(CPI)が事前予想を上回ったことを受けて米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が高まり、年4回の利上げを見込む向きも出てきた。米財政赤字拡大に対する懸念も金利上昇要因であり、米国債の売り圧力が強まると、長期金利が一段と上昇する可能性が出てくる。3%を超えると株式市場で手じまい売りが進むとの見方もあり、金は株安に対するヘッジとして買われるかどうかも確認したい。またトランプ米大統領は、ホワイトハウスの会合で「アメリカは巨額の貿易赤字を抱えている。中日韓やほかの多くの国々に対し多額の損を出している」と述べ、貿易の不均衡を是正していく姿勢を示した。11月に米中間選挙を控え、通商政策で米国の国益を追求する姿勢を示している。米商務省は、アルミニウムと鉄鋼の輸入制限を米大統領に勧告した。日本を含む全ての国からの鉄鋼輸入に最低24%の関税を適用する措置など、さまざまな選択肢を提示した。米大統領は鉄鋼については4月11日、アルミは同19日までに判断する見通しとなっており、通商問題に対する懸念が強まると、金の支援要因となる可能性がある。
 アジア市場では、金価格が急反発するなか、インドで3週間ぶりにティスカウントに転じた。前週は3ドルのディスカウントとなり、前々週の1.5ドルのプレミアムから低下した。インドの宝飾業者は高値での買いを見送った。一方、中国市場は15日から旧正月で休場となった。21日まで休暇であり、今週は連休明けの動きを確認したい。
 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月13日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは17万5,606枚となり、前週の19万0,877枚から縮小した。今回は手じまい売りが2万1,968枚、買い戻しが6,697枚入り、買い越しを1万5,271枚縮小した。一方、2月16日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比3.84トン増の824.54トンとなった。ドル安再開を受けて安値拾いの買いが入った。米国債の利回りが上昇したが、米財政赤字拡大に対する懸念も上昇要因となっており、支援要因になりつつある。

【プラチナは小幅な供給過剰見通し】
 ニューヨーク・プラチナ4月限は、ドル安再開を受けて堅調となり、1月29日以来の高値1,015.8ドルを付けた。米株安が一服し、リスク選好の動きが戻ったことも支援要因である。一方、英ジョンソン・マッセイ(JM)の報告書によると、2018年のプラチナは小幅な供給過剰が見込まれた。欧州のディーゼル車の平均充填量減少による自動車触媒需要の減少と中国の宝飾需要減少が見込まれるが、産業用途の需要増加で投資需要を除くと小幅に増加すると予想された。供給面では自動車触媒からの回収で小幅増が見込まれており、投資需要が変わらなければ小幅な供給過剰になるという。
 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは3万8,371枚となり、前週の4万1,819枚から縮小した。手じまい売りが買い戻しを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、16日のロンドンで11.36トン(9日11.77トン)に減少、15日のニューヨークで17.92トン(同17.92トン)、南アで25.11トン(同25.11トン)と横ばいとなった。

【NY原油はサウジ・エネルギー相の発言などが支援要因に】
 ニューヨーク原油は、米国のシェールオイルの生産増加に対する懸念が圧迫要因となったが、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相の発言やドル安・株高を受けて下げ一服となった。同相は、見通しが不透明ななかで協調減産を短縮するよりも現状の軌道を維持するほうが望ましいとの認識を示しており、今後の産油国の協議の行方を確認したい。米エネルギー情報局(EIA)が発表した2月9日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比184万1,000バレル増加し、3週連続で増加した。ただ受け渡し地であるオクラホマ州クッシングの原油在庫が8週連続で減少し、下支え要因とみられた。一方、米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された2月16日までの週の米石油リグ稼動数は前週比7基増の798基となった。4週連続で稼働数が増加し、2015年4月以来の高水準となった。
 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月13日時点のニューヨーク原油の大口投機家の買い越しは71万2,261枚となり、前週の73万9,097枚から縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。一方、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている原油ETF(コード:USO)の残高は16日時点で1億5,920万株となり、前週末比900万株増加した。

【2月19日からの週の注目ポイント】
19日 日本貿易収支(1月)                      ☆
   上海・香港市場は旧正月祝日のため休場              ☆
   米株式・債券市場はプレジデンツデー祝日のため休場        ☆
20日 EU財務相理事会                        ☆
21日 米中古住宅販売件数(1月)                   ☆
   米FOMC議事録                        ☆☆
22日 独Ifo景況感指数(2月)                   ☆☆
   NY連銀総裁、講演                        ☆
   アトランタ連銀総裁、講演                    ☆
23日 日本消費者物価指数(1月)                   ☆
   サンフランシスコ連銀総裁、講演                 ☆
*重要度を3段階で表示



ニューヨーク金はドル安再開で戻り高値を試す
ニューヨーク金4月限はドル安再開を受けて急反発し、1月25日以来の高値1,364.4ドルを付けた。米株価の下落が一服し、リスク選好の動きからユーロ高に振れたことや、米財政赤字拡大に対する懸念を受けて金ETF(上場投信)に投資資金が戻ったことが支援要因になった。米長期金利の上昇が続くと、株安に対するヘッジとして買われる可能性も出てきた。テクニカル面では1月25日の高値1,370.5ドルを突破すれば1,400ドルの節目を目指すことになりそうだ。



2018年2月19日

(みんかぶ 東海林 勇行)

株式会社みんかぶ 東海林 勇行

担当
商品先物市場、為替

経歴
1996年から商品先物業界でアナリスト業務に従事。主に工業品銘柄を担当し、現在、貴金属担当。貴金属の需給に加え、経済指標や市場間の投資資金の動向を分析、予測。テクニカル分析もし、値動きをわかりやすく解説できるように努めています。

コラム一覧へ戻る

当社は「ALL先物比較」に掲載される情報(以下「掲載情報」といいます。)の完全性 および正確性を保証いたしません。また掲載情報は、将来における結果を示唆するものではありません。 したがいまして、お客様において掲載情報に基づいて行動を起こされた場合でも、 当社はその行動結果について何らの責任も負担いたしません。 掲載情報に基づく行動は、お客様の責任と判断によりお願いいたします。
掲載情報は、金融商品の売買等の勧誘を意図したり、推奨するものではありません。 お客様において掲載情報に含まれる金融商品の売買等の申込等をご希望される場合には、 その掲載情報に記載の金融機関までお客様ご自身でお問い合わせください。 当社はお問い合わせに関し対応いたしかねます。
掲載情報のうち「先物マーケットコラム」等に関しましては、著作権法等の法律により保護されており、 個人の方の私的使用目的以外での使用や権利者に無断での他人への譲渡、販売コピーは認められていません。